モン族について

クラフトエイドの展示をすると、日々の暮らしや部族の歴史をモチーフにしたかわいい刺繍がいつも評判になるモン族。「自由な人々」という意味のHmong(モン)は、その名の通り独立心が強く、自分たちのスタイルを守ろうとする意識の強い民族です。同じ「苗族」で漢民族の文化や社会を受け入れた「ミェン族」とは異なり、文字を使わない独自の文化を築いています。古くは倭寇の撃退役も務めたモン族の「抵抗」や「戦闘」の歴史は長く、近年ではモン族の約5分の1にあたる延べ20万人が内戦やベトナム戦争で犠牲となりました。大国の戦略に巻き込まれ、同じ民族の中で二派に分かれて戦ったこともあり、難民となってアメリカやヨーロッパへ移住していった人も大勢います。華やかな民族衣装や盛大なモン正月の影には、アイデンティティを守りたいという強い意思が表れています。

パンダオ(花の布)が愛らしいモン族の衣装

モン族の女性の民族衣装は、刺繍、ろうけつ染め、リバースアップリケなどに彩られた、華やかでとても愛らしいものです。いくつもの伝統技術を駆使して家族の衣装を作るのは、女性の仕事。女の子は6‐7歳になるとお母さんやお祖母ちゃんに刺繍を習い始めます。13歳ぐらいで一人前になり、15‐6歳になると自分で作った衣装を身につけてお祭りの舞台へ。「刺繍の上手い娘は、賢く良き妻になる」といわれ、美しい衣装の女の子は人気者になります。

スカートは藍を使ったろうけつ染めに、刺繍やアップリケで模様をたくさんつけたもの。さらにそれを細かく畳んで縫い留めて板に挟み、200本ものプリーツを作ります(これは洗濯したらやり直しです)。衣装は、このスカートに上着と脚絆、エプロン、ベルトを合わせて完成。衿、袖口、裾、肩や布と布が合わさる部分ところは、刺繍やアップリケで隙間なく飾ります。これは、病気やケガをさせる悪霊が境目や隙間から身体に入ってくるのを防ぐため。刺繍には、霊力があるとされる薬草や、伝説に登場する蝶や鳥、故郷の畑の様子など、意味の込められたモチーフが使われています。モン族の装飾は、美しさだけでなく、祖先や精霊への尊敬の念と家族の幸福や健康を願う女性たちの祈りでもあります。

日本のお正月のルーツ?「モン正月」

近年は、移動を繰り返す焼畑農業を行ってきたモン族ですが、かつては一箇所に定住し水田で米を育てていました。この米作りが日本に伝わったという説もあります。そんなつながりからか、モン族のお正月の様子には、日本と似ている部分が多くあります。モン族のお正月はお米の収穫があった次の新月の日。土地によって、また年によってお正月の時期が決まりますが、大体12月ぐらいでしょうか。大晦日には家の大掃除をし、晴れ着を着てお正月を迎え、川や井戸で水を汲んで五穀豊穣を祈ります。モン族はお餅つきもします。もち米を食す文化は東南アジアに広くありますが、お餅をつく文化は、世界的にみても多くはありません。半月ほど続くお祭りでは、仮面をつけ炭を体中に塗って、草で体を覆った守護神も登場します。子どもたちを見ると脅して「良い子になる約束」をさせる様子は、秋田の「なまはげ」そっくりだそう。竹馬、コマ回しもあります。

お祭りは男女の出会いの場にもなります。若い男女が向いあって一列に並び、気に入った相手とボールを投げ合う『ポゥポ』も大事な行事です。ボールを落とすと罰ゲームもあるとか。準備も入れ、延べ1か月近くは仕事そっちのけで「お祭りに集中」です。刺繍の注文をしている私たちは「そろそろ働いてくれないかな…」と思うこともありますが、一度体験してみたい、盛大なお祭りです。

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