第2回 アカ族のおもてなし
〜アジアの手仕事の魅力/クラフトエイドのフェアトレード〜
こんにちは、クラフトエイドの石田理絵です。「礼を尽くす」「もったいない」「おもてなし」。これらの表現は日本人特有のものと思われがちです。
しかしタイの人々の間では日本人と同じく、いやそれ以上に、おもてなしの精神ががっしりと根付いていました。
丘のふもとの村から見た景色
2018年8月。チェンマイから車で5時間かけて、山奥にあるアカ族の村を訪問しました。アカ族は丘の急斜面の下に集落を作ります。霧雨の降るなか車を降りたとき、なによりもまずその緑の深さに驚きました。
雨と、木と、土の匂い。濡れた草花が一層鮮やかさを増しています。
今回はデザイナーのFUJI TATE Pさん、グラフィックデザイナーの Kohtaro Hori(horitz) さん、フォトグラファーのHirotaka Hashimotoさん、初めての訪問となる私(石田)と、案内役として生産団体の方2名、総勢6名の大所帯でお邪魔しました。長旅で疲れた私たちを笑顔で迎え入れてくれたのは、アカ族の皆さん。曇り空とは対照的なにぎやかな衣装が、気持ちを明るくしてくれました。
手料理のおもてなし
ご挨拶もそこそこに、すぐに食事の用意が始まりました。ビーズや硬貨のついた衣装をじゃらじゃらいわせながら、せっせと働くお母さんたち。なんだか動きづらそう…
アカ族の特徴でもある、オーナメントのたくさんついた帽子はおよそ2kg。結婚の有無や経済力、年齢、いつ子どもを持ったかによって、オーナメントの量や種類が変わります。盗難が頻発したため現在ではレプリカを付けるのが主流ですが、本物の硬貨を付けていた頃はもっともっと重たかったのだそう。
これを昼も夜も、さらには寝る時まで被っていたというのですから驚きです。
昔は日常着として着られていたこの民族衣装も、今では結婚式や新年のお祝いでのみ着られるようになりました。日本の着物と同じですね。ちなみにアカ族では、毎年4月に新年を祝います。
見事な衣に感心しているうちに、あっという間にご飯の支度が整いました!
テーブルいっぱいの手料理。感激です。アカ族は100種類以上の薬草や野菜を取り入れる、食の知恵に長けた民族と言われています。テーブルの端にモサッと置かれたハーブは、パクチーとミントの間のような味がしました。レストランでしかタイ料理を食べたことがない私にとって、どれもこれも新鮮な味。食べるのに夢中になりすぎて、食材や調理方などを聞いて来なかったことが本当に悔やまれます。タイ料理は辛いイメージがありますが、この日頂いたごはんはスパイシーなものは少なく、少し酸味のあるスープや柔らかく煮たお豆など、日本食に似た優しい味付けが印象的でした。
こちらは食卓のようす。左手前からドライバーさん、デザイナーのFUJI TATE P氏、英語の話せる現地生産者さん、アカ語の話せる現地生産者さん、私、グラフィックデザイナーの堀さん、そしてこの写真を撮影してくれたカメラマンの橋本さんで食卓を囲みました。
コミュニケーションの難しさ
到着してすぐに感じたのは、意思疎通のむずかしさ。実をいうとこの下の集合写真も、意思の疎通に失敗した証のような一枚となりました。一列に並び、ばっちり前を向いてキメてくれたアカ族のみなさん。本当は自然にくつろぐ姿が撮りたかったのに…
なぜこうなってしまったのか。考え得る原因はこうです。
私「今からフォトグラファーが自由に写真を撮って周りますね」(英語)
生産団体スタッフ1「今から写真を撮るそうですよー」(タイ語)
生産団体スタッフ2「写真を撮るので集まってくださーい!」(アカ語)
みたいな感じでしょうか。そもそも私の伝え方が悪かった可能性もあります。村の人々はアカ族の言葉しか喋れないので、私たちは3つの言語を通して会話をしなければなりません。生産団体の方も、英語とアカ語を両方喋れる人は稀なようです。
このもどかしさは、タイだけでなく各国とのやりとりの中でも同じです。団体の中でも英語を話せる人が一人しかおらず、その人が体調を崩したり、長期の休みに入ったりすると途端に仕事が止まってしまいます。いつも日本の事務所で感じていた“伝わらないもどかしさ”が目の前で見える化した瞬間でした。
その後丁寧に説明をしそれぞれの作業に戻ってもらいましたが、なんとなく不自然さが抜けずボツになったのも今ではいい思い出です。
アカ族はホスピタリティーに溢れる民族だった
あいにくの雨にも関わらず、一生懸命におもてなしをしてくださったアカ族の皆さん。食後にはすかさずお茶を出してくれたり、休む間もなくアカ族の帽子を頭に乗せてくれたりと、次から次にイベントが発生します。言葉は通じなくても「喜んでもらいたい」という気持ちが充分に伝わってきました。(このあと村を案内してくれました。その時の様子は随時ご紹介していく予定です!)
明るく、お祭り好きで、おもてなしの心を持った人々。村に辿り着いた時にどこか懐かしさを感じたのは、彼らが日本人と通じる精神を持っていたからかもしれません。
アカ族のみなさん、ありがとうございました!
Gula Huma! (アカ語で「ありがとう」)
Photo by Hirotaka Hashimoto