第3回 希望の家
〜アジアの手仕事の魅力/クラフトエイドのフェアトレード〜
「希望の家」(House of Hope)はタイ北部にある養護施設です。エイズや麻薬、貧困などで親と一緒に生活ができなくなった山岳民族の子どもたちを保護し、家庭の暖かさや教育の機会を提供しています。クラフトエイドでは「おばけチャーム」やビーズアクセサリーを共に作成し、子どもたちの成長を見守っています。
2018年夏、入職して初めての出張で、タイのチェンマイにある「希望の家」を訪問しました。チェンマイといっても旅行雑誌で見かけるような“古都・チェンマイ”の賑やかな街とは違い、周囲を田んぼと畑で囲まれたのんびりとした農村地帯の真ん中に養護施設はありました。
中心地から車に乗り込むこと約2時間。最初のうちは旅行気分だった私も、ドライバーさんが何度も車を止め、村の人に道を聞きながら奥へ奥へと入っていくにつれてようやく、「嗚呼、日本から持ってきたチェンマイガイドブックはいらない荷物だったなぁ」と気が付くことになります。
入口を入って正面に、白い壁とオレンジ屋根の建物が見えました。なんとなく、さつきとメイが暮らすあの建物を彷彿とさせます。ここには食堂や教会、多目的ルームがあります。
左奥に見えるのは男子寮。建物の裏側には池があり、子どもたちの恰好の遊び場となっています。
現在、希望の家では約40名の子どもたちが共に暮らしています。
希望の家の子どもたち
子どもたちは自由に伸び伸びと、笑顔あふれる毎日を過ごしています。しかし決して、両親と暮らせない寂しさや過去の辛い記憶を忘れたわけではありません。
2日間という短い滞在の中で、一人の女の子とじっくり話す機会がありました。 名前はJuneちゃん。おとなしいけれども人懐っこい、笑顔の可愛い女の子です。 彼女は少し英語を話すことができたので、「おはよう」「おやすみ」などの簡単なタイ語を教えてもらったり、日本でのこと、タイでのこと、お互いの日々の暮らしについてお喋りをしました。
彼女はアカ族の出身で、両親は村にいるけれども事情があって一緒には住めないのだと教えてくれました
アカ族は昔から治療や痛み止めとしてケシを栽培していた歴史もあり、両親が麻薬中毒のために子育てができなかったり、貧困や虐待が理由で保護される子どもたちも施設には多くいます。
Juneちゃんが希望の家にきた経緯はとても本人には聞けませんでしたが、自分の生まれたアカ族の村について語る時、彼女の中にある深い悲しみの一部が見えたような気がしました。
彼女は英語・日本語・韓国語を勉強中で、「将来は薬剤師になりたい、語学を勉強している時が一番楽しい、もっといろいろな言語が話せるようになりたい!」と話してくれました。 彼女は学校での勉強のほかに、私たちのような訪問者と積極的に会話をしながら独学で語学を学んでいます。
日本では当たり前のように義務教育で、英語も数学も“やらされている”と思っている人がほとんどではないでしょうか。正直私もそのうちの一人でした。学ぶ機会がたくさんあったのに生かしきれていない私と、自ら進んで学ぼうと努力しているJuneちゃん。とても考えさせられるひとときでした
希望の家のアクセサリーを販売しています!
学びとは机に向かう勉強だけではありません。クラフトエイドでは、ものづくりの楽しさやデザインのおもしろさを伝える為に、子どもたちとのワークショップを行っています。長期の休みに帰る家のない子どもたちにとって、取り組むべき何かがあること、モチベーションを引き出すきっかけを作ることはとても大切な取り組みのひとつです。
今回もデザイナー自らが訪問、作り方をレクチャーし、新しいデザインのアクセサリーが完成しました!ワークショップについてのお話は、随時ご紹介していく予定です!
この「どんぐりイヤリング/ピアス」の収益の一部は希望の家の運営資金または子どもたちのお小遣いとして運用されます。たくましく生きる希望の家の子どもたち、応援よろしくおねがいします!
Photo by Hirotaka Hashimoto